書くことは、何かを残す行為だと思っていた。
考えをまとめたり、
誰かに伝えたり、
意味を持たせたり。
でも最近、少し違う。
書こうとして書くのではなく、
暮らしていると、言葉が滲み出てくる。
湯気のように。
光の粒のように。
気づいたら、そこにある。
私にとってそれは作業ではなく、
整理でも、発信でもない。
呼吸に近い。
朝、窓を開けたときの空気や、
コーヒーの香りや、
夕方の静けさが
身体の中に入ってきて、
言葉になって外へ戻っていく。
だから書くと整うのではなく、
整っていると書かれている。
暮らしの中心にあるものではないのに、
暮らしの質を変えてしまうもの。
料理におけるスパイスのようで、
部屋における灯りのようで、
そして、アロマのようなもの。
なくても生きていける。
けれど、あると
世界の輪郭がやさしくなる。
私は文章を書いているのではなく、
今日という日の香りを瓶に閉じ込めているだけなのかもしれない。


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